2013/12/19

12月19日 レフコシア、パフォス

12月19日(木曜日)

6時30分ごろ、レフコシアのトルコ側にあるモスクからアザーンの声が聞こえてくる。昨日、リドラス通りの地下にあるスーパーマーケットのパン屋で買ったパンを食べてから、観光に出かける。天気は快晴。早朝は少し寒く感じる。

ホテルのあるライキ・キドニアと呼ばれる地区から、城壁に沿って東へ。城壁外側のくぼ地は駐車場や公園になっていて、防御壁として機能していた当時の面影はない。星形要塞の稜堡部分も、モスクがあり、駐車場やバス停があり、独立記念碑が立っていたりと、こちらも開発されまくっている。いろいろ見物しながらゆっくり歩いても、20分ぐらいでファマグスタ門のところまでやってくる。稜堡の付け根に申し訳程度に作られている古い門で、今はもちろん使われておらず扉が閉められている。

昨日、ギルネに往復したときに、ドルムシュが通り抜けた『ギルネ門』は、城壁内に車が出入りする主要な通路として今でも使われているので、場所が悪ければ放置される運命にあるのだろう。


レフコシア星形城塞の外壁と稜堡(奥に見える半円形のところ)

ファマグスタ門のところから、城壁内の旧市街の観光を始める。道路は入り組んでいて、不思議な角度で交わっている。まるで、中東の旧市街『メディナ』のようだ。同じ星形稜堡でもドイツ系の人たちが造ったものは道が碁盤の目のように整然と並んでいるのに対して、イギリスやフランスの十字軍騎士団やジェノバ共和国などが造ったニコシアは道路がぐちゃぐちゃだ。民族性の違いか…。スマートフォンのGPSナビゲーションを使わないと、まともに歩くことはできそうにない。

17世紀に建てられた聖ヨハネ教会と、司教館内にあるビザンチン博物館をまず見学する(入場料4ユーロ)。教会はこの地域によくある尖塔を持つバジリカ様式のもので、天井は一面にフレスコ画が描かれていて、内陣にはイコンが大量に飾られている。ビザンチン博物館には、オープンと同時の9時に入場。まだ館内の照明がつけられておらず、私が見て歩くと同時に係員が照明のスイッチを入れて歩いていた。キプロス島各地の教会から集められたイコンや、壁から引きはがされて保存されているフレスコ画やモザイク画がたくさん展示されている。いまは、北キプロス共和国になっている地域のフレスコ画やモザイク画が修復途中の状態にもかかわらず、作業用デスクの上に大量に並べられていた。トルコ側に占領される寸前に、とりあえず貴重なものだけ引きはがしてきたのだろうか…。


聖ヨハネ教会

旧市街中心のファネロメニ広場に向かう。商店の資材を運ぶのだろうか、大量の車が旧市街の狭い道に入ってきて渋滞している。ファネロメニ広場周辺は歩行者天国になっていて、ファネロメニ学校や図書館なども密集して建てられている。ファネロメニ教会は、おそらくギリシャ側レフコシアの中で最も大きな教会堂なのだろう。

さらに西へ向かう。道路工事を至る所でしていて、歩きにくい。星形要塞をほぼ横断して、西端にあるパフォス門のところまでやってきた。ちょうど、この門の北側にギリシャとトルコの停戦ライン(グリーンライン)が引かれていて、閉鎖された建物や道路などが点在している。旅行ガイドブックやWikipediaには、ファマグスタ門・パフォス門 そしてトルコ側のギルネ門が最もよく保存されたもんだと解説されているが、どこも観光でわざわざ見に行くようなところかなと感じた。


停戦ライン(グリーンライン)に沿った無人地帯

ファネロメニ広場まで戻り、レドラ通りの検問所から北キプロス(トルコ側)のレフコーシャに入る。昨日、夕方で撮影ができなかったビュユック・ハンやセミリエ・モスクを撮影し、昼食を食べる。ギリシア側でもギロスという名前で売られている、鶏肉の焼き肉(チキン・ドネル)と米や野菜のサラダ、フレンチフライのセットの品を食べる。トルコでしか飲めないヨーグルト飲料のアイランも注文。合計で7ユーロ、昨日余った5トルコリラと、5ユーロを支払う。ギリシア側で同じような料理を食べるより、3割くらい安く感じる。


セミリア・モスク(旧ソフィア聖堂)


レフコーシャ(トルコ側)のバザール

ホテルをチェックアウトする前に、10分くらい時間が余っていたので、レベンティス博物館を見学する。ここは、街の歴史を展示する博物館で、入場料は無料だった。昔の地図が展示されている部屋で、じっくりと昔の地図を眺めてみると、ほぼすべての地図で星形要塞の中心にソフィア大聖堂(現 セミリエ・モスク)があり、現在ではトルコ側になっている建物が数個コメント入りで書かれているだけで、南のギリシア側は住宅のような特徴のない建物群がちょろっと描かれているだけだ。つまり、主要施設(観光地)のほとんどがトルコ側にあり、南のギリシア側に残されたものは「他にいくらでも代替の利く経済的施設だけ」のように感じた。


レフコシア(ギリシア側)メインストリートのレドラ通り

11時30分過ぎにホテルに戻りチェックアウト。ソロムウ広場のバスターミナルに向かうと、12時発のパフォス行きのバスが既に停車している。

■ レフコシア 12:00 → パフォス 14:10 (インターシティ バス 運賃7ユーロ)


レフコシアのバスターミナルに停車するパフォス行き

バスはほぼ満員の乗客を乗せて、高速道路を途中停車なしで一気にパフォスまで走った。途中のレメソスに停車すると思いきや、高速道路から降りることなく一気に通過した。予定通りほぼ2時間で、パフォスのカラベラ・バスターミナルに到着。バスを降りると、外はどんよりと曇っている。

市バス618系統に乗り換えて、ネット予約したホテルのある海岸地区のカト・パフォスに向かう。バスは、緩やかな坂道をずっと下ってゆき、10分でカト・パフォスのバスステーションに到着。2日前のラルナカと同じく、海辺のリゾート地だが、こちらのほうが街の規模が小さいのか、さらに閑散としている。海からの風が、閉鎖された店々の間を吹き抜けている。

ホテルにチェックインし、荷物を置いて、周辺の観光地をいくつか見て回ることにする。先ほど、市バスが通ってきた道沿いに巨大なショッピングモール(キングス・アベニュー・ショッピングモール)が見えたので、そちらのほうへ向かうことにする。まずは、ホテルのすぐ裏手にある聖キリヤキ教会へ。以前の巨大な聖堂の崩壊した跡地の中心部に、ちょこんと小さい聖堂がたてられている。かつての聖堂の床のモザイクや、屋根を支えていた巨大な円柱が残っていて、そちらのほうが見どころじゃないのかと思うくらいだ。で、この聖堂で有名な「聖パウロの柱」がどれなのか… 巨大な教会跡の円柱ではないようだ。公園にちょこんと小さな大理石の柱が残っていて、そこに「聖パウロの柱」と注釈のプレートが貼られている。よく注意してみないと忘れてしまいそうなくらい小ささだ。


かつての巨大聖堂跡地に建つ聖キリヤキ教会


聖パウロの柱(伝説では、聖パウロが打たれた棒と言われている)

市バスの走る道に出て、街の中心方向の北へ。ソロモニ聖堂のカタコンベと呼ばれる、墓の跡が道路沿いにある。傍らの木は、枝に大量のビニール袋が巻きつけられて、まるで「ゴミの大木」のように見える。木にスーパーのビニール袋を巻き付けて、何か御利益でもあるのだろうか…。地下墓地に下りる階段があったので、降りて行ってみるが、照明も何もないのでおいそれと中を覗くこともできない。


ソロモニ聖堂のカタコンベの外観(木にビニール袋が結び付けられている)

そこから少し北に行ったところには、巨大な岩をくりぬいた墓場の跡。地下をくりぬいたのか、地上をくりぬいたかによって、呼び名が違うのは不思議だ。

キングス・アベニューのショッピングセンターに入る。一番奥に、スーパーマーケットのカルフールが入っている。2階のフードコートにあったタコベルで5.2ユーロのセットメニューを食べる。ホテルに戻る途中、ホテルのすぐ近くにあるスーパーマーケットで水や果物を買う。あまり人が住んでなさそうなカト・パフォス地区で、巨大なスーパーの採算は合うのだろうか。

■ ピラモス・ホテル 301号室(20ユーロ/1泊)