2013/12/18

12月18日 ラルナカ、レフコーシャ、ギルネ

7時に朝日が昇る。東の空には、少し雲がかかっているが、だいたい晴れている。レフコシア行きのバスが出発する10時30分までの間、ラルナカの観光地を巡っておく。

まず、海岸沿いにあるラルナカ城へ。ホテルからは、海岸沿いのフィニコウンデス並木道を南へ行ったところにある。砂浜から海に向かって突き出した桟橋から見る城の姿が、入場料を払って中から見るよりも美しかった。城の入場料は2.5ユーロ。12世紀から14世紀ごろに建てられた砦を、18世紀にオスマン帝国が改築したのが今ある城だそうだ。


ラルナカ城とグランド・モスクのミナレット

リゾートホテルが立ち並ぶ海岸沿いに、たとえ18世紀の砦といえども、観光地にエキゾチックな雰囲気を醸し出している。ラルナカ城のすぐ横にはミナレットが1本立っているグランド・モスク、さらに少し西へ歩いたところに、聖ラザロ教会。観光地ではないようだが、街を代表するモスクや教会だということだ。この地区は、下町の中心街のようで、入り組んだ道路沿いには商店が立ち並び、公設市場もあった。


聖ラザロ教会

ラルナカでみられる遺跡で、もっとも有名なのは「古代キティオン跡」だろう。ラルナカ城からは、海岸沿いのフィニコウンデス通りを北端まで行き、そこから、考古学博物館前を通り過ぎて少し小高い丘になったところに広大な遺跡がある。丘に登ってゆく途中には、別の遺跡が発掘中で、看板には「アクロポリス発掘中。立ち入り禁止」と書かれている。ローマ帝国時代のものだろうか…。 キティオン遺跡の方はローマ帝国・共和制ローマ時代よりもっと古く、紀元前12世紀とか、そういう古さだ。紀元前12世紀から、紀元前1世紀のローマ帝国の属州化までの間の歴史が残されていないようなので、この巨大な神殿を作った文明がどうなったのか、興味あるところだ。


キティオン遺跡

バスの時刻までしばらくあるので、マクドナルドで朝食セット(Big Breakfast 4.2ユーロ)を食べてから、ホテルをチックアウト。レフコシア行きのバスは、泊まっているホテルの斜め向かいのフィニコウンデス通りのバス停から、ほぼ満員で出発した。地元の人がほとんどで、観光客と思しき人は5人程度だ。夏のハイシーズンなら、積み残しが出そうな感じだ。


■ ラルナカ 10:30 → レフコシア 11:43 (バス 運賃12ユーロ)

バスは、フィニコウンデス バス停を出発すると、市内の何カ所かのバス停に停まって、その間に30分ほど過ぎる。結局、市街地の間を結ぶ高速道路の走行時間は、20分度だ。ラルナカの街を出る直前のバス停では、学生が道路を封鎖して警官とにらみ合っている。経済破たん問題が、まだ長引いているのだろうか。

レフコシアに到着して、すぐにインターネットで予約したホテルに向かう。部屋には入れなかったので、荷物だけ預けて外へ。歩行者天国となっている繁華街のリドラス通りを5分ほど北へ歩いていくと、北キプロス共和国との間の徒歩横断者用の検問所がある。パスポート検査場の審査窓口が数個開いているが、観光客が皆無のため誰も並んでいない。地元の人が行列を作っていないのは、買い物越境をするくらいの価格差が両国の間には顕著じゃないのだろう。


北キプロス・トルコ共和国のビザ(パスポートではなく、入国検査所の窓口でくれるこの紙にスタンプを押してもらう)

ベルリン亡き後、都市のど真ん中に国境線が引かれているのは、この街が世界で唯一のところらしい。キプロス島の南半分のキプロス・ギリシア共和国と、北半分のキプロス・トルコ共和国がちょうどレフコシア(首都)の真ん中に国境線を引いたのがこの場所だ。ちなみに、南キプロスは国連に加盟し、トルコ以外の各国が承認しているが、北キプロスはトルコのみが承認しているだけで、日本も含めほぼすべての国は「国として認めていない」。入国審査で国連のスタンプを押してくれるコソボより、ひどい状態だ。北キプロスに入国することは「自己責任」として個人が勝手にすることで、そこで事故が起こっても各国の大使館からは無視される(救援されない)のを納得して国境線を越えるというのが、「建前」らしい。


リドラ通り検問の国境線に掲示された国連による警告文

北キプロス側に入り、まずは島の北岸にあるギルネに向かう。ギルネ行きのドルムシュ(乗り合いタクシー)のスタート地点に向かう。ギルネ方面には、バスとドルムシュの双方が走っているが、値段は高いが断然早いドルムシュのほうが時間が無い旅行をしている私には貴重だ。ドルムシュはしばらく平原を走ったのち、島の北端の山脈を越える峠道となっている。峠を越えると、目の前に地中海の青紫の海と、海岸線沿いに並んでいる小さな町の白い家々が見えてくる。

■ レフコーシャ 12:35 → ギルネ 13:09 (ドルムシュ 5リラ)

ドルムシュの終点から、すこし坂道を下ると旧港がある。以前、クレタ島のハニアやレシムノンにあったベネチア共和国時代の旧港とどことなく似ている。ギルネでは、ベネチア共和国は港ではなく砦(キレニア城)の改修をしたようだ。キレニア城に入場(12トルコリラ)し、港に面した塔から写真撮影をしていると、日本人から声をかけられる。キエフやサラエヴォを巡って、トルコに来たそうだ。次はイランのテヘランに行くとのこと。「物書きをして生計を立てている」とのことなので、政治経済的にホットな地域を巡っているのだろう。


ギルネ旧港とキレニア城


キレニア城の塔内部

城を出てから、旧港周辺を見て歩いてから、ふと通りかかったドネル レストランで昼食。10リラで大皿にドネルケバブと、サラダなどを盛り付けたもの、さらに2ユーロでトルコ風ヨーグルト飲料(アイラン)を注文。おそらく、南キプロス側で食べるより、若干安いと思われる。(それでもツーリスト価格だよね…)

■ ギルネ 15:30 → レフコーシャ 15:55 (ドルムシュ 5リラ)


両国の国境線上、非武装無人地帯が数メートル取られている

ギルネ門から、北キプロス領内のレフコーシャを観光する。適当に国境通過ポイント方向へ歩いてゆくと、教会の回廊のような建物にレストランや土産物屋がはいっ建物がある。ビュユック・ハン(隊商宿)と呼ばれるオスマン時代に建てられた施設らしい。そこから少し東へ行くと、ソフィア大聖堂を改築してモスクに転換した建物がある。現在の名前は、セミリエ・モスクとなっている。内部は、明らかに教会の建物だ…。キリスト教の祭壇があった内陣には何もなく、側廊の中間あたりにミフラーブがある。イスラムとしては、この建物は使いにくいに違いない…。


ビュユック・ハン(隊商宿)

国境を再び越えて、南キプロス側のレフコシアに戻る。北キプロスの出入国スタンプは、メモ用紙のような別の紙に押されるので、パスポートが汚れなくてありがたい。レドラ通りにあるデベンハムの地下スーパーマーケットで、パンや水を購入。パソコンやスマホの充電器を接続するためも、コンセント変換プラグを購入(2.3ユーロ)。この国のコンセント形状が、イギリスと同じだというのは、少し意外だった。

■ レフコシア スカイ・ホテル 201号室(35ユーロ)