2014/11/03

11月3日 ティヴォリ、ローマ

11月3日(月曜日)

朝起きて外を見ると、雲は出ているが、何とか晴れているようだ。軍服を着た予報士が解説しているテレビの天気予報では、ローマのところには晴れと曇りのマークのほかに、にわか雨のような記号も付いている。どう転んでも、当たる天気予報だ(笑


海軍の軍人が解説する 「今日の天気」

7時25分ごろホテルを出て、すぐ近くにあるテルミニ駅へ。地下鉄B線に乗り、終点の一つ手前の駅まで行く。ここに、郊外へ向かうバスが出発するバス停がある。

■ テルミニ 7:35 → ポンテ・マンモーロ 7:52 (地下鉄 B線)

列車から降りた人は、階段を降りて改札を出ていく。その後について改札を出ると、バスターミナルの降車場がある。乗り場は上の階という掲示があるので、上の階に上がってみるが、バス停はあれど切符売り場が無い。底流所でバスを待っていた女性に聞いてみると、切符売り場は地上階とのこと。やはり、先ほど改札を出たところにタバッキ(売店)があったようだ。地上階に下りて、売店でヴィッラ・アドリアナまでの切符を2枚(往復分)を購入。

■ ポンテ・マンモーロ 8:10 → ヴィッラ・アドリアナ della Serenaバス停 8:43(COTRALバス 2.20EUR)

バスは10人くらいの乗客を乗せて出発。途中のバス停から、どんどん客が増えて行く。ティブルティナ街道をまっすぐ東へ。バスの正面にある行先表示にも、「ROMA , via Tiburtina , TIVOLI」と、紀元前3世紀に造られたローマ街道名が今でも現役で使われている。
バス停には停留所名など気の利いた表示は全く無く、どこで降りるか熟知している乗客専用のバスだ。周りの人に降りるバス停がどこなのか聞くか、GPSナビで自己責任で降りるかのどちらかだ。今日は、GPS衛星の位置が悪く、誤差が大きすぎて使い物にならなかったため、近くに座っていた人に下りるところを教えてもらった。(バス停名はdella Serenaで、考古遺跡とは全く関係ない新市街のバス停の一つだ)

バスを降りて、反対側の車線をしばらく観察すると、ローマ方面行きのバスが停車するところがわかる。降りたバス停から、信号ひとつローマ方面に戻ったところに帰りのバス停があるようだ。

さて、ヴィッラ・アドリアナ新市街を縦断して、考古遺跡に向かう。新市街に特に見どころは無いようで、売店や軽食屋のようなものがちらほらある程度。15分ほど歩くと、ヴィッラ・アドリアナ遺跡の入場口に到着。ちょうど目の前を、ティヴォリの市バスが通り過ぎて行った。鉄道駅から来るなら、この市バスに乗るのだろう。


ハドリアヌスのヴィッラ 模型

考古遺跡や博物館は月曜休みのところが多いが、このヴィッラ・アドリアナ遺跡は年中無休で営業している。月曜の旅行予定を立てやすいので、ありがたいことだ。入場料8ユーロ払って中に入る。入場口から遺跡のあるところまでが、中途半端に遠い。遺跡の入り口手前には、敷地全体の復元模型を置いた案内所があり、まず模型を見て全体像をつかんで欲しいということなのだろう。


ストア・ポイキレ
壁の最上段の四角い穴は、屋根を支えていた柱を通していたもの

遺跡で最初に目に飛び込んできたのは、あまりにも巨大なストア・ポイキレの壁。もちろん、アテネの古代アゴラの同名のもののコピーだ。オリジナルの方は、地下鉄モナスティラキ駅の横の空き地に顔を出している石ころくらいだが、こちらはそびえ立つ壁がどこまでも続いている。哲人皇帝マルクス・アウレリウスでなくても、思索にふける「ふさわしい場」は必要だったのだろう。

この遺跡のもっとも有名な見どころの「海の劇場」は改修工事中で見ることができない。皇帝の公邸と考えられている地区には、図書館と呼ばれている建物が何棟もある。皇帝や官僚が公文書などを保管していた建物なのだろう。残っている遺跡は3階建て程度なので、相当たくさんの文書をため込んでいたのだろう。


ペスキエラ(養魚場)と、遥か丘の上に見えるティヴォリの街

円柱が並ぶ回廊が何か所もあり、クラウディア水道などから分岐させて水をもらい受けていたのだろう。飲み水だけでなく、回廊の池に流したりして、自然の冷房装置として使っていたと思われる。

皇帝ハドリアヌスは、人気の期間中ほとんどを、属州への巡察旅行に費やしている。ギリシア文明やエジプト文明の建物の模倣した施設を造るなど、皇帝の個人的趣味を最大限取り込んだ、この夏の宮殿にどれくらいの期間滞在して治世を行っていたのだろうか…。


テルマエ(浴場)

回廊や池などがわかりやすいが、舞台のようにオープンスペースの端にある建物はすべて北向きに造られている。日当たりよりも、夏の灼熱の直射日光にさらされないことを考えて作ったのだろう。


カノプス池

カノープスの池と呼ばれている場所の隣には、巨大な浴場(テルマエ)が2軒も建てられている。テルマエが2軒要るくらい、滞在者が多かったのだろうか。皇帝と秘書官、巡察旅行に連れ歩いた建築家、官僚などそれほど数が多いとは思えないのだが…

商店街と呼ばれている3階建ての巨大な建物が完全な形で残っている。昨日行ったオスティア・アンティカでも、商店が複層階というような規模のものは無かった。インスラの1階部分などに入っているのが一般的だ。この遺跡では、3階建ての建物はインスラではなく、商業施設のみだったようだ。もっとも、下層階級の人民が住む賃貸住宅インスラを、ハドリアヌスのヴィッラに造る必要もなかったので、全階が商店だったというのも何となく想像はできる。


ドーリス式列柱のある建物

月曜で観光客がここに集中すると思っていたが、12時過ぎまで3時間近く居たが、客数はまばらだった。市内から遠いので、観光ルートには入っていないのだろう。

12時過ぎ、新市街を再び縦断してバス停に向かう。バスを待っていると、年配の女性がいきなり道の真ん中に出て、行き過ぎる車を止めてヒッチハイク交渉を始めた。バス停で待っているほかの乗客は、「あの人は痴ほう症じゃないのかしらん」と言っている。判断能力が鈍っているのだろうか。

20分以上待って、やっと来たバスは学生で超満員。ふと後ろを見ると、3台のバスが数珠つなぎでやってきている。運転間隔を適切に保つという工夫すらないのだろうか…

■ ヴィッラ・アドリアナ della Serenaバス停 12:36 → レビビア 13:17 (COTRALバス 2.20EUR)

■ レビビア 13:20 → テルミニ 13:37 (地下鉄 B線)


地下鉄レビビア駅前に到着したティヴォリ発のバス

道路が渋滞していてバスがなかなか進まない。終点の1つ前のバス停で多くの乗客が降りるので、ついて行くと地下鉄駅があるようだ。そこから地下鉄に乗り、テルミニ駅へ。駅前のピザ屋で、切り売りのピザ2枚とコカコーラで昼食(8ユーロ)。


ヴィットリオ・エマニュエレ公園のローマ水道 分水施設跡

泊まっているホテルの前の旧水族館の建物を見に行く。門が開いていて、入り口に掲げられている看板には「建築家協会の事務所」と書かれている。水族館前を通り過ぎ、ヴィットリオ・エマニュエレ公園へ。公園の真ん中に、古代ローマの水道施設跡がある。アレクサンドリナ水道の末端にあった分水施設(カステロ・アクアエ)だ。3階建てくらいの高さの、とても大きな施設だ。

昼からは、天気が良いうちに郊外のローマ水道橋を見に行くことにする。

■ ヴィットリオ・エマニュエレ 14:12 → スバウグスタ 14:37 (地下鉄 A線)


水道橋公園の位置を中世の地図に書き込んでみた

地下鉄の駅を出て南西へ。5分ほど歩くと、広い公園に出る。その名も「水道橋公園」。公園の向うの仕切り壁と思っていたひたすら続いているレンガ造りの壁が、実は水道橋の残骸を利用したもの。その向うには、もっと背の高い水道橋が見えている。

手前の低い橋脚の水道橋は、フェリクス水道。古代ローマ時代のマルキア水道などの遺構を再利用し、改修して造られた水道橋だ。向うにある背の高い水道橋は、クラウディア水道。パラティウムに引き込まれていた水道は、このクラウディア水道から分水したものだ。


遥か彼方まで続くクラウディア水道の水道橋

水道橋の周りは芝生公園のような状態で、乗馬クラブやゴルフ場などとなっている場所もある。イタリアでもジョギングが流行しているのか、水道橋のわきの道を走っている人を時折見かけた。フェリクス水道もクラウディア水道も、ティヴォリ付近を流れるアニエネ川のはるか上流から水を運んでいた。総延長は100㎞弱もあるそうだ。


少し低めのフェリクス水道の水道橋

水道橋に沿って、ローマ市内の方向へ歩く。数キロメートル行ったあたりで、双方の水道橋が立体交差している場所がある。水道橋の上に載せられた導水渠も水源ごとに仕切られているし、立体交差部分でも水が混じるようなことが無いように造られている。水道橋の上に載せられている複数の導水渠は、内面がコンクリート仕上げて水が漏れないようになっている。2000年前の技術力で、よくここまで精密な土木構造を作れたなと感心する。

■ ルチア・セスティオ 16:14 → ヴィットリオ・エマニュエレ 16:27 (地下鉄 A線)

地下鉄A線は落書きなどはほとんどないので車両はきれいだが、B線は落書きだらけ。A線は車両が新しいので、警備員を常時付けているのだろうか…


インド料理セット

ヴィットリオ・エマニュエレ公園周辺は、観光客はほとんど見かけず、アフリカやインド、中国からの移民の人たちが営む店が大量にある。そのうちの1軒のインド料理ファストフード店に入る。インドで一般的なおかずを3品と、ご飯、ナンが付いたセットメニューを食べる(ミネラル水付きで6ユーロ)。そういえば、2日前にもインド料理のビリヤニを食べたな…。

■ Hotel Acqualium 521号室