2016/06/30

6月30日 台北、淡水

2016年6月30日(木曜日)

ホテルの朝食メニューは昨日と全く同じ選択肢だったが、お粥、卵焼き、野菜炒め、ハム、漬物類、ナッツと日本人の通常の朝食の選択肢だったががほぼ網羅されていて問題ない。

日本の気象庁の衛星写真では、梅雨前線が台湾のほうまで下がってきている。太平洋高気圧の張り出しが弱いと、昨晩の台湾のテレビニュースで言っていた。エルニーニョとかラニーニャとかいう異常気象なのだろうか。昨晩から今朝の早朝まで雨が降っていたようだが、朝起きたときにはやんでいた。時折薄日が差すが、基本的には1日曇り。

8時30分ごろホテルを出て、台北北駅から地下鉄に乗る。

■ 台北捷運 台北車站 8:37 → 士林站 8:48  (20台湾元)

下車駅の数駅手前で、スマホの台湾バスアプリで故宮博物院行きのバス接続を調べる。地下鉄下車して4分後に、近くの大通りにバスがやって切るらしい。地下鉄を降りたら、アプリが表示している地図の場所に急いで向かうと、ちょうどバスがやってきた。バスに乗る人がスマホの画面を凝視して歩いているのは、バスの乗り継ぎナビが完璧に機能しているからなのだろう。台湾全土のすべての市バスや長距離バスのリアルタイムの運行状況が分かるのだから、もはやこのアプリなしでバスには乗れないだろう…。ずっと以前はバス路線図の本を買ったものだが、もう明らかに本の時代は過ぎ去った過去の歴史になってしまった。

■ 公車 815系 捷運士林站 8:52 → 故宮博物院門口 9:03 (15台湾元)

故宮博物院


故宮博物院前でバスを降りたのは2名で、すぐ後にやって来た別のバスも下車したのは数名。故宮博物院を遠くに臨むバス停から、博物院に通じる広場と階段には誰も歩いていない。博物館は年中無休のはずなので、おかしいなと思いながら歩いていくと、博物館の直近の大階段の下はバスの車寄せがある地下道路があるようで、観光バスが次々と到着している音が聞こえる。

博物館の建物に入り、「個人客用の」切符売り場へ。誰も客がいない。個人で来る客は皆無なのか…。入場料は250台湾元。切符を買ってX線検査機を通過して中に入る。数組の団体客が大階段の下に居るが、ほとんど客がいない。まず3階の玉器展示室へ。日本人団体が3組くらい、中国語の団体が4から5組くらいいるくらいで、「近年は中国人団体客でごった返して見物どころではない」という噂は過去のものになったようだ。

故宮博物院は、かなり空いている
故宮博物院   ほぼ無人の展示室も…


蔡英文が新総統になって、親米・親日路線に転換したので、「アジアの皇帝の座」という中国の夢を見る習近平の逆鱗に触れてしまい、中国人団体客の送出を制限した結果が、閑散とした故宮博物院の状態だ。個人客の立場として言わせてもらえば、中国大陸の客が居ないほうが気持ちよく観光できるので、とても良い状態だ。ただ、台湾も「インバウンド経済効果」を得ていたので、その筋の商売の人は経済的に困っているだろう。

日本国内で「インバウンド云々」と旗を振っている政治屋や経済団体、カスゴミなどは、中国大陸政府に依存したら、いずれしっぺ返しを食らうことを覚悟したほうがいいと思う。そもそも、観光がいくら盛んになっても、国の経済は維持できないのはギリシャを見れば明らかだろう。

各国観光局のデータからは、台湾を訪問する旅行客はゼロにはなっておらず、ほんの1割くらい減った程度だ。ロイター通信の記事では 『中国の旅行業者2社はロイターに対し、総統選挙を受けて、台湾への旅行客数を制限するよう当局から命じられたと明らかにした とも書かれており、1割減らすだけで経済的打撃を与えられるなら、数年前のように排日運動が中国大陸で大規模に起り制御不能になれば、1割減どころか9割減というのもありえない話ではない。



玉器 → 青銅器 → 陶磁器 → 書・漢字変遷 → 書画 → 清朝宮廷調度品 とのんびり見て回る。団体客のほとんどは、有名な品物の前だけを高速で見て通過していく。食事や買い物をやめても、この中国4000年の歴史の工芸品類をじっくり見てけばいいのに…。いまは、肉型石や白菜玉器はどこかに貸し出されて不在なので、そのせいで客が少ない… なんて事はないか。

3時間ほど見物して、ふたたびバスに乗り地下鉄士林站に戻る。

■ 公車 304系 故宮博物院門口 11:51 → 捷運士林站 11:59 (15台湾元)

士林站の南口付近の自助餐で昼食。この店は50元固定料金の店で、選んだおかずで値段が上がりすぎないところがありがたい。客が長い行列を作っているのもそのせいなのだろうか。

■ 台北捷運 士林站 12:31 → 淡水站 12:57  (40台湾元)

士林の食堂


台北市内を南北に縦断している淡水川の河口の町、淡水で下車。河岸とそこから1本内陸側の通り(老街)に、学生や若者向けのジャンクフード屋台や雑貨店が軒を連ねていて、たくさんの人が遊びに来ている。日本と違い、ジャンクフードや安食堂の価格が半額以下なので、台湾の人にとっても手軽な娯楽なのだろう。

淡水站前から、紅26系のバスに乗り、紅毛城へ向かう。


■ 公車 紅26系 捷運淡水站 13:11 → 紅毛城 13:19 (15台湾元)

バス停のすぐ前に紅毛城の入場口があり、若い女性が次々と入っていく。切符売り場には、「工事前の最後の機会なので入場無料」と貼り出されている。坂道を登っていくと、工事用のシートに覆われた建物(砦)が1棟と、その裏にまだシートが掛けられていない建物1棟(領事館)がある。17世紀にスペインが建て、オランダ、イギリスと引き継がれ、台湾政府に返還されたのは1980年のことだそうだ。館内1階には、イギリス領事館だった当時の調度品が並べられている。2階は、この場所が恋愛の聖地らしいので、それに関する展示。
なんで恋愛の聖地なんだろう…。

紅毛城

紅毛城 (領事館)
ふたたびバスで淡水站付近まで戻り、老街を見物。コンビニで休憩して、川沿いを歩く。対岸を結ぶ観光船が泥水のように濁った川を渡ってきて、ゴミが大量に浮く観光桟橋に接岸している。昨晩の夕立で上流からゴミが大量に掃きだれてきたのだろう。ジャンクフードの屋台には日本とは少し違った趣向のものが売っている。イカ焼きではなくイカの姿揚げとか、巨大なソフトクリームとか。市街地では食事になるような実用的なジャンクフードが多いが、ここでは単なるおやつにしかならないもののほうが多い。

淡水老街 中正路


■ 台北捷運 淡水站 → 台北車站 15:27 (50台湾元)

地下鉄で台北車站まで戻ってくる。高速鉄道駅の自動券売機で、明日から延伸されて開業する台北郊外の南港站の検索をしてみる。確かに、今日の予約はエラーで、明日は購入可能。台北郊外の町まで延伸してもそれほど価値があるとは思えないのだが、台北駅ではなく少しは土地に余裕のある南港站に折り返し用プラットホームを作ると、鉄道会社としては価値があるのかもしれない。

西門の一つ向こうの站にある艋舺龍山寺を見に行く。西門から店が沿道に立ち並ぶ地区を南西へ。10分ほど歩くと艋舺清水巌という小さいお寺がある。昨日参拝した保安宮と、この2つの寺をあわせて「台北の三大廟門」というらしい。その中では、清水巌だけが規模が小さすぎる気がする…。

艋舺龍山寺


さらに5分ほど歩くと南西へ行くと龍山寺がある。正面入り口の右側には巨大な人工滝が作られていて、水がたくさん流れ落ちている。観光的には特に珍しいものはなく、夕方にもかかわらずたくさんの参拝客を集めていると思った。龍山寺の近所にある自助餐で夕食。125台湾元。歩いて西門のほうへ。巨大なカルフールがあり、テナントにニトリが入っていると看板が出ている。中山通り沿いには、かつての本願寺の跡地に日本家屋を模した建物が復元されている。

■ 力欧時尚旅館 105号室 1085台湾元/日

2016/06/29

6月29日 台北

2016年6月29日(水曜日)

台北で泊まっているホテルは、朝食がついているので助かる。ヨーロッパの格安ホテルなどでは、パンとハム程度の質素な朝食が一般的だが、台北のこのホテルは各種の中華総菜だけでなく、欧米人向けの食パンまで置いているのは流石だなと思う。

天気予報は、午前中は曇り時々晴れ、夕方には雷雨。昨日は13時過ぎに雷雨だったので、今日の観光も午前中に予定をこなさないといけない。
北門(承恩門)


まず向かったのが、ホテルの面する通りの北に見えている北門(承恩門)。19世紀に清朝が日本との勢力争いで、最前線の台北を確保するために作った城郭都市の門だ。東西南北の各門と小南門の5つがあったようだが、西門はもはや存在せず、東門・南門と小南門は第二次大戦後に改築されているので、建設当時の姿が残っているのは、この北門だけだ。単なる四角柱に近い、どっしりとしたデザインは戦争に備えて防御力に重きを置いていたのだろう。日本が台湾を接収したのちに、城壁をすべて破壊したので、今では城壁があった位置に作られた広い道路の真ん中にポツンと門が取り残されている。

そもそも、城壁が実際の戦争で役立ったのは中世までで、大砲などの直撃弾で砲撃される時代は、城壁ではなく半地下の要塞にしないといけないのに、戦争技術を軽んじた清朝は当時の日本には全く対抗できない古すぎる防御施設を造ったわけだ。これより少し前の明治初期の日本では、幕府軍の最後の抵抗として最新技術を導入した星形要塞の五稜郭が作られていた。

北門の向かい側、旧台北城郭の内側には日本が造った台北郵便局の建物がいまでも郵局として使われている。再びのテルの前を通り過ぎ、南へ。15分ほど歩くと、総統府前を通り過ぎて司法大廈(司法院のビル)の前まで来る。この建物も日本統治時代の高等法院ビルを引き継いで使っている。東京の霞が関ですら、ネオルネッサンス様式の重厚な官庁ビルはほとんど無く、海外県の台湾に日本国民の税金を大量投入して立派なビルを建てまくったことが、実際に現地で目にしてみると実感できる。
司法大廈
小南門


司法大廈の少し南西には小南門があり、これは第二次大戦後に改築されてきらびやかな装飾門になってしまっている。さすがに中華民国政府も人民解放軍相手に台北の城壁を再興しようとは思わなかったのだろう。ここで貸自転車スタンド(You Bike)で自転車を借りる。

大通りに沿って東へ。台北市立大学前を通り過ぎると、華美な装飾の南門がある。南門の城外側には、台湾総督府専売局の建物が残っていて、20世紀末まで台湾政府の専売事業の事務所としても使われていたそうだ。日本にも専売公社なるものがあったが、いまはJTになり、こういう歴史的建物があったのかなと…。
専売局

東門

さらに東に行くと中正紀念堂のある自由広場前に出る。ここで自転車をいったん返却。自由広場の目の前には、東門があり、遥か向こうには総督府の建物が見えている。大陸から来た中国人観光客が、太陽に当たりたくないのか、広い広場の端っこの建物沿いに歩いている。広場の西端にある「大中至正」門は「自由広場」門に書き換わっている。2007年に民進党政権が書き換えたそうだ。中国大陸の国民党の象徴の蒋介石は残してても問題ないんですかね…。そこをいじると、大陸の中国政府の逆鱗に触れるので、いじれない事柄なんでしょう。
自由広場門
中正紀念堂の衛兵交代式

中正紀念堂は正面から見ると階段を登らないといけないようだけれども、中に入ってみるとエレベーターがあり、南北の横の出入口があるあるのに気付いた。ちょうど10時の衛兵交代式が始まったので、見物する。いろいろな国で衛兵の行進を見てきたが、ここではエレベーターで衛兵が登場するという珍しいパフォーマンスがある。屋内だけを行進するのは、外があまりに蒸し暑いからなのだろう。見物する観光客も暑いのは嫌だし…。

中正紀念堂の北側の門「大忠門」を出たところのコンビニで休憩。すぐ近くの自転車貸出スタンドで自転車を借り、北へ。済南プロテスタント教会、立法院(旧 台北第二高等女学校)、監察院(旧 台北州庁)と、かつて日本統治時代に建てられた歴史的建築物が並んでいる。教会以外は観光地でないので中は見れそうにない。




監察院(旧 台北州庁)

台北医大病院前で自転車を返却し、二二八和平公園へ。日本統治時代に土地収用して作られた大都会のど真ん中の公園だ。いまでは中華風の池と楼閣がある中華庭園だ。公園の北には、巨大なグリークリバイバル様式の台湾博物館(旧 台湾総督府博物館が)が建っている。公園内には戦前のラジオ塔が残っていて、中にはスピーカーの残骸らしきものまで残されているのが見える。大阪にもラジオ塔が2か所あるが、ここほど保存状態は良くない。

■ 台北捷運 台大醫院站 11:20 → 圓山站 11:32 (20台湾元)

地下鉄に乗り、圓山站へ。駅から西へ5分ほど歩くと、孔廟がある。学問の神様はどこの街にもあるようで、台北の孔子廟は日本統治期に造られたそうだ。菅原道真を押し付けるのではなく、かつてのローマ帝国のように征服民族の宗教を取り込んでいく事は重要だろう。台湾に日本の神社を建てるような浅はかな考えの人が権力の上のほうを占めていたのにもかかわらず、よく孔子廟を認めたものだ。




孔子廟のとなりには大龍峒保安宮がある。保生大帝などが祀られている18世紀に建てられた廟らしい。

孔廟
大龍峒保安宮

ちょうど昼過ぎになったので、大龍峒保安宮と孔子廟の間の道を少し南に行った大龍街夜市の自助餐で昼食(90元)。この手の店では珍しい、ご飯とスープが取り放題。そんなに食べれるものではないが…。
大龍街


■ 台北捷運 圓山站 12:52 → 台大醫院站 13:01 (20台湾元)

ふたたび二二八和平公園にもどってきた。天気予報ではそろそろ雷雨かもしれない時間に突入。台湾博物館に入場(30元)。台湾の自制植物や動物御ジオラマが少しあり、少数民族の展示が少し。かなり場所を割いていたのは日本統治期から現在までの代表的な建築物の変遷を映像と写真で解説する特別展。蔡英文が新総統になって、展示内容を急遽西側諸国よりに変えたのだろう。今日、台北市内で見てきたが歴史的建物のほとんどがこの展示と重なっていて、偶然とはいえなかなか運が良かった。

台湾博物館

博物館を出て、ホテルの近くでマンゴーかき氷を食べる。マンゴーが1個分以上入っていて、120元と日本では考えられないくらい安い。さすが亜熱帯の果物の産地価格だ。

15時ごろ、予想通り大雨が降ってくる。ちょうど、ホテル近くのアーケードの下を歩いていたのでぬれずに済んだ。雨がやみ、16時すぎに地下鉄に乗り、光華商場見に行く。

■ 台北捷運 西門站 16:38 → 忠孝新生 (20台湾元)

日本でいうところの、秋葉原・大須・日本橋の電気街のようなところで、電子部品屋(秋葉のラジオデパート)やパソコンの部品屋などが集まっている。日本ではこの手の店はすでに流行ではなく、パソコンは安物のメーカー品で誰もが満足し、部品云々というマニアはほとんど絶滅してしまった。電子部品屋も、日本では学校のロボットクラブ用の完成品パーツを売る店程度が流行っているくらい。台湾ではこの手の電子機器類に興味を持つ若者がまだたくさんいて、驚くことに女性も…、店が繁盛している。この手の設計能力を持つ人がたくさんいることで、電子工業が発展し、結果として日本の家電メーカーが負け、台湾の鴻海にシャープが買収されるような時代になった。  と、台湾博物館の展示でも書かれていて「シャープの買収は、その歴史の移り変わりに日本人は驚いたはずだ」と。

■ 台北捷運 忠孝新生 17:18 → 西門站 (20台湾元)

■ 力欧時尚旅館 105号室 1085台湾元/日

2016/06/28

6月28日 苗栗、台北

2016年6月28日(火曜日)

7時少し前、今朝も昨日までと同じく八徳一路の豆漿屋に行き朝食。餃子5個と肉包、豆漿で58台湾元。いったんホテルに戻り、荷物をまとめてチェックアウト。なかなか快適なホテルだった。高速鉄道の始発の左営站は、台鐵でも捷運(地下鉄)のどちらでも行ける。ホテルから近い台鐵で行くことにする。

■ 台鐵 高雄站 8:10 → 新左営站 08:21 (区間車 15台湾元)
高鐵 高雄站 700T形列車
高速鉄道駅 車内



台湾高速鉄道の車両と運営方法は日本のJRの方法を真似ているので、中国大陸と違い当日乗車する切符ならいつでも改札を通り抜けられる。セキュリティ的にはどうなのかなと疑問に思うが、乗らない列車の写真撮影できるのは、個人的にはありがたい。

今日乗る9時発の「各站停車版」の列車は8時41分に高雄站にやってきた。大学生と思われる若者が大量に下車する。やはり、今週から夏休みなのだろう。車内清掃が入るので、すぐには乗車できない。折り返しの時間を利用して、人海戦術で清掃するのも、日本の新幹線と似ている。座席の方向が自動的に方向転換しないのは、この車両がJR東海のものを忠実にコピーしたからなのだろう。

■ 高鐵 左営站 9:00→ 苗栗站 10:26 (1015台湾元)

9時ちょうど、滑らかな加速で出発した列車は、水田や町工場、住宅などが入り乱れる郊外の景色の中を進んでゆく。まるで、日本の新幹線に乗っているのと変わりない感覚だ。車両の貫通ドアの上にある電光掲示板に「中日新聞ニュース」が流れないので、ここが台湾だと改めて気付かされる。途中駅は、どこも市街地から離れた郊外に駅を造ったため、乗客にとってはさぞ不便だろう。しかし、市街地を走らないということは日本のように速度制限が掛かりまくるという事がない利点もある。途中駅で、数度、「直達版」の列車に追い抜かれる。10時26分、ほぼ遅れることなく苗栗站に到着した。

高鐵 苗栗站(左側高架)と、工事中の豊富站
この站は去年の12月に出来たばかりの新駅だ。田園地帯のど真ん中に駅を造るのは、日本なら政治的配慮という悪しき慣習だが、ここではどうなのだろうか。駅を出て、造成されただけで建物が何も建っていない地区を10分ほど歩き、豊富站に向かう。途中に看板くらいたてておけばよいものを、乗客はスマホのGPSナビで歩けというのだろうか。
高鐵 苗栗站からの眺め


豊富站の駅舎はまるで廃墟状態の無人駅で、これが高速鉄道との乗換駅ですか…。高速鉄道站に隣接して新駅の工事をしているので、いずれ廃站になるのは間違いないのだろうが、それまでの1年間程度であっても、この状況は客相手の商売としてはありえないだろうと…。いくら日本の新幹線システムをコピーしたとしても、やはり自ら考えて作り出さなかった技術は進歩できないということなのかもしれない。

切符売り場とか、乗車証明書とかそういうのもないので、やってきた電車に「無賃乗車」。数分で次の苗栗站に到着。

■ 台鐵 豊富站 10:43 → 苗栗站 10:47 (区間車 15台湾元)

苗栗站の改札口で事情を話して運賃精算してもらう。駅員さんは日本語を話せる人で助かった…。站の南に隣接する鉄路管理局の敷地内に、鉄道文物展示館(鉄道博物館)がある。台湾では鉄道博物館はここだけだが、大宮や京都にあるのと比べると、とんでもなく簡易的なものだ。まあ、近所の人や一部マニア向けのものなのだろう。私が行った時には、近所の子供連れの家族1組だけが遊びに来ていただけだ。
CT152形蒸気機関車
DT561形蒸気機関車
阿里山鉄路28號蒸気機関車
R6形ディーゼル機関車

それでも展示車両の説明板には英語・日本語・韓国語が併記されていて、外国人観光客が来ることもあるのだろう。無料の展示館の入り口付近には、CT152形蒸気機関車(日本では8620型と呼ばれた車両)が、その後ろにはDT561形蒸気機関車(日本では9600型と呼ばれた車両)が鎮座している。日本でも台湾でも、同一シリーズの機関車が主力として活躍していたのだろう。

日立製のR6形ディーゼル機関車や、GE製のS405形ディーゼル機関車、製糖工場で使われた機関車なども展示されていて、1970年代までの主な機関車類を見ることができる。

30分ほど見物して、駅前のファミリーマートで高速鉄道の切符を買い、站に戻る。改札口横の売店で台鐵弁当(60元)を買って、再び列車に乗って高速鉄道駅に戻る。 在来線で台北に行くこともできるのだが、高速鉄道の全路線完全乗車するために、値段は高くても高速鉄道を選択。

・在来線 自強號 苗栗站 12:11 → 台北站 13:50 … 255元
・高速鉄道 苗栗站 12:26 → 台北站 13:18 … 410元

■ 台鐵 苗栗站 11:36 → 豊富站 11:39 (区間車 15台湾元)
■ 高鐵 苗栗站 12:26 → 台北站 12:18 (1015台湾元)

高速鉄道駅の待合スペースのベンチで台鐵弁当を食べ、構内のセブンイレブンでお茶を買って飲んだ頃に、列車の出発時間ごろとなる。長~いエスカレーターでプラットホームに上り、列車に乗車する。朝乗ってきた車両は、乗客は窓際の座席のみに埋まる程度だったが、今回乗る列車はほぼ満員。
高鐵 苗栗站


苗栗付近はうす曇りだったが、台北に近づくほど雲が厚くなってくる。板橋站からは地下路線となり、台北駅はホームドア付きの地下駅だ。乗降客が多いのに、駅のホームが狭いので乗客が溢れんばかりになっている。

駅前の地下街を通り、予約したホテルに最も近い出口で地上に出る。空は真黒な雲に覆われていて、どこからともなく雷鳴も聞こえる。足早にホテルに向かい、急いでチェックイン。外を見ると、土砂降りの雨になっている。運よく雨にぬれずに済んだ。

雨が止むまでホテルの部屋で過ごし、15時過ぎに外へ。台北站南側や西門付近の繁華街をぶらっと歩いて、鶏排飯のセット(85元)を夕食として食べ、歩いていたら小腹がすいたので梅子紅茶(25元)と切仔麺、鶏肉飯(各35元)を食べる。
西門付近


総督府を見に行ってみる。蔡英文が新総統になって1か月。中国大陸の政府と半ば敵対関係になったため、総督府の建物の警備体制が上がっている。一般見学は中止になり、前の歩道では立ち止まることも写真を撮ることもできない。民主主義が定着したように見えても、やはり代表者1名を差し替えれば国の方向が劇的に変化する不安定な国なのだろう。
総督府


■ 力欧時尚旅館 105号室 1085台湾元/日

2016/06/27

6月27日 台南

2016年6月27日(月曜日)

7時少し前、昨日の朝と同じ八徳一路の豆漿屋に行き朝食。今日は餃子4個と肉包、菜包、豆漿で70台湾元。少し食べすぎか…。

8時、台鐵高雄站発の自強號(特急)に乗り台南を目指す。列車は満員で、通路まで立ち席になっている。寸前に切符を買ったが、運よく最後に近い席を確保できていたようだ。

■ 台鐵 高雄站 8:00 → 台南站 8:32
台南站に到着した自強號(左側)


列車は快晴の空の下、途中、左営站にのみ停車してノンストップで台南まで走る。台南付近は少しだけ雲が出ているが、雨が降りそうな気配は全くない。今日も暑そうだ。台南站は中国大陸で一般的な下車コンコースが駅舎本体から分離した形の建物だ。北方面からの列車も同時に到着したらしく、大量の乗客が改札機に長い列を作っている。夏休み(?)の学生がたくさん居るので、余計に混んでいる。台湾はもう夏休みなのかな…。
中山路

真夏の太陽を避け、中山路の商店などの庇の下を歩く。店はほとんどが休みのようで、シャッターに「星期一 定休日」と貼りだされている。日本では最近はどこの商業施設も年中無休なので、日本と見分けがつかない似たような雰囲気の街で、日中にシャッターがほとんど閉まっているのは少しだけ違和感がある。
国立台湾文学館(旧大日本帝国台南州庁)
孔子廟
孔子廟の願掛け札

約15分ほど歩くと、、民生緑園のロータリーに出る。国立台湾文学館の戦前の石造りの建物が一角に鎮座している。かつての大日本帝国台南州庁だった建物だ。旧台南州庁の建物を右手に見ながら南へ少し行くと孔子廟がある。ここは入場料25台湾元。学問の神様なので、受験の合格祈願らしき黄色の紙を吊るす場所があり、日本の天満宮の雰囲気だ。上空の低いところを、時折空軍のF-CK-1が滑空していく。本当に手が届くぐらいの近さに見えるところを、着陸態勢で降りていくのが見える。沖縄で米軍基地がうるさいと騒いでいる人たちは、5分に1回程度、戦闘機が滑空していく直下に大都会があるこういう場所も許せないのかな。台湾も沖縄も敵国に面した最前線なので、ある意味仕方ないのかも。

台湾空軍F-CK-1(経国號戦闘機)


孔廟のすぐ横には、小学校があり、かつての日本統治時代に台南神社の施設だった武徳殿が残っている。いまでも小学校の講堂として使われているようだ。神社は日本人以外には信仰対象として定着しなかったので、中国人の統治下になってから孔子を祀る土地になったのは妥当だろう。
旧 台南神社 武徳殿


孔廟から南東へ5分ほど歩くと、中世に(宗主国のオランダを追い出して)台湾を建国した鄭成功を祀る延平郡王祠に着く。日本統治時代も、ここは鄭成功を祀る開山神社だったが、台湾国民党は日本人が作った宗教施設を良しとせず、すべて鉄筋コンクリート製の建物に建て替えられてしまっている。

延平郡王祠の鄭成功騎馬像
延平郡王祠


延平郡王祠から西へ、台南市街地を取り囲んでいた城壁に開けられた門の一つ、大南門がある。かつて城門は5箇所あったそうだが、現在残っているのは大南門だけ。かなり改修されて、ほぼ改築に近いくらい魔改造れた門から歴史を感じることはむつかしそうだ。城楼の上からは中学校の校庭が見える。この蒸し暑い中、よたよたと中学生が走っている。日本なら熱中症にかかるので体育の授業が中止されるくらいの暑さだが、台湾では気温の基準が違うのだろう。門の敷地に隣接して、中世にから近世の石碑が集められ並んで展示されている。
大南門
林百貨


もう、この辺りであまりの蒸し暑さに体力が尽きかけてくる…。忠義路を北へ。日本統治時代の百貨店「林百貨」が、セレクトショップ的に復活開店している。宗教施設は許容できないけど、商業施設は旧宗主国のものでもOKなのね。人の心とは難しいものだ。さらに少し北、天壇の入口にあるセブンイレブンで休憩。野菜ジュースとクリームを挟んだロールパンで58台湾元。
大天后宮
赤嵌楼


媽祖を祀った大天后宮、三国志に登場する関羽を祀った祀典武廟をお参りしてから、すぐ北に面した赤嵌楼に入場。ここは観光地なので入場料が50元。かつて台湾島を開拓したオランダ人が、この島で初めて開設したプロヴィンティア砦の跡地だ。鄭成功がオランダを撃退したのち、プロヴィンティア砦は基礎を残して破壊され赤嵌楼が造られたという。今残っているのは日本統治時代に復元されたものだそうだ。復元するなら、嘘っぽい木造の建物より、オランダ時代の石造りの城を復元したほうが観光的にはよかったのではと思う。
北極殿


玉皇大帝(天公)を祀った天壇、玄天上帝を祀った北極殿をお参りして、民生緑園のロータリーに戻る。ロータリーの手前には気象台があり敷地内に日本統治時代の旧庁舎が残っている。まるで灯台か、イスラム寺院のミナレットのような丸い塔がある建物だ。

站に戻る途中、冷房の効いた涼しい店で牛肉麺定食(90元)を食べて、站に到着したときには高雄行き列車の発車直前のベストタイミングだった。
紅焼牛肉麺


■ 台鐵 台南站 12:30 → 高雄站 13:12 (82台湾元)

乗車したのはいわゆる急行列車の「莒光号」。車内は空いていて、朝乗った特急とは大きな違いだ。車内販売で弁当や飲み物も売りに来るので、これだけ空いているのが分かっていたらここで昼食を食べるのも悪くはなかったかな。

高雄に戻り、コンビニで明日の高速鉄道の切符を買い、夕食は昨日の排骨飯を食べた店で鶏排飯(70元)を食べ、さらにホテルの斜め向かいの店で酸辣麺(60元)を食べる。
三鳳中街


■ 金馬大飯店 512号室 1273TWD(4073円)

2016/06/26

6月26日 高雄

2016年6月26日(日曜日)

7時過ぎ、朝食を食べに豆漿屋に向かう。肉饅、餃子、豆沙饅、豆漿でほぼ満腹。だいたい50台湾元くらい。


肉饅、餃子、豆漿
朝からじとっと蒸し暑い天気だ。8時頃、台鐵高雄站へ。售票處(切符売り場)で岡山站までの区間車(普通列車)の切符をクレジットカードで購入。高速鉄道の新駅工事でカオス状態の駅の中をあるき、改修前の状態のプラットホームへ。区間車はごついステンレス車体の窓が異様に小さい電車。韓国の大宇が製造した車体だ。

岡山站

■ 台鐵 高雄站 8:32 → 岡山站 8:58 (31TWD)

岡山駅を出て炎天下の駅前通りを西へ。駅前のロータリーにはタクシーが並んでいるが、今日は自転車を使おうとと思う。高雄市の貸自転車c-bikeのアプリで自転車貸出スポットを検索し、5分ほど歩く。台湾はスクーター王国で自転車に乗る人はほとんど見かけず、貸出場所の自転車もほとんど残っている。クレジットカード番号と有効期限、セキュリティーコードをタッチパネルで入力して自転車を借りる。市街地を抜け北西へ15分ほど走ると、空軍基地に隣接する士官学校の敷地に沿う道に入る。空軍の航空教育展示館は今年の2月ごろに少し南から移転して巨大な建物の中に飛行機が展示されている。荒れ地のなかを一直線に延びる工事中の道から、すでに巨大な建物が見えている。自転車を借りてから15分程度で展示館前に到着。観光バスが何台か止まっていて、すでに観光地になっているようだ。

貸自転車c-bikeと空軍航空教育展示館の建物


館内には総統専用機として使われていた巨大なB-727が中央付近に鎮座し、かつて日本帝国軍の航空機と戦った複葉機や、当時の米軍機などから、国共内戦で使われた航空機。鹵獲した人民解放軍のイリューシン28爆撃機、ミグ15やミグ19戦闘機などの歴史的な機体が所狭しと並んでいる。新しいものではF-5AやF-104Dなどの前世代の航空機まで。現在、台湾空軍主力のF-16は模型すら飾られておらず、入口にある土産物屋のTシャツにロゴがあるくらいだ。

航空教育展示館 館内全景

鹵獲した人民解放軍のミグ戦闘機
F-5A
F-104D
S-2T哨戒機
40マイル対空砲
GBF-10レーザー誘導弾
AN-M65爆弾

「台湾」の歴史を展示するのではなく、中国の国民党の空軍史を展示しているので、台湾島とは全く関係ない中国本土での戦いを「中国側から見た歴史」を展示せざるを得ないのだろう。明後日、鉄道博物館に行く予定だが、あちらはどうなのだろうか。台湾が日本の海外県だった50年間は空白で、むりやり中国大陸の歴史をしらっと挿入してお茶を濁してるのだろうか。

展示館を後にし、自転車で市街地に戻る。途中、維新路の商店街を通り抜ける。普通、日本なら混雑している商店街には自転車などは乗り入れ禁止なのだが、ここではバイクが走りまくっている。それも、バイクに乗ったまま店のカウンターでドライブスルー的に買い物するという器用さだ。

市街地をとおりぬけ、朝自転車を借りた所を通り過ぎて、捷運(地下鉄)岡山南站へ。途中、コンビニで野菜ジュースとあんパンを買って店内で休憩。定期的に水分を補給しないと脱水症状になりそうだ…。
岡山南站で自転車を返し、端末機には2時間5分で50台湾元と表示された。

■ 捷運 岡山南站 11:20 → 左営站 11:41 (34TWD)

高鐵左営站


地下鉄で左営站まで。列車内の冷房が気持ちいい。左営站で隣接する新光三越へ。2階のユニクロでバーゲンに出ていたパンツ(下着)を買う。暑いので毎日洗濯するため着替えが必要だ。 站東側の市街地にある食堂で昼食。百貨店の中で食べてもよかったが、丸亀製麺やココイチなど日本にもありがちなファストフードより、地元民用の食堂のほうが旅行にはふさわしい。

高速鉄道駅横の貸自転車スタンドで自転車を借りて、蓮池潭観光に出かける。中国大陸の杭州の西湖のような、中国人が喜びそうなコテコテのお寺が池の周りに並んでいるところだ。

コテコテのお寺で中国人の人たちは、お供え物を買うので入場料を取らなくてもお寺が経営できているようだ。その恩恵で、外国人は無料でコテコテのお寺を見物できる。
孔廟

玄天上帝神像
北極殿
春秋閣
春秋閣、龍の口の中の通路
龍虎塔

1時間ほど池の北岸をめぐり自転車を返却する。返却のスタンドのコンピュータがフリーズし、本当に返却出来ているかどうか心もとない。

観光を終わり、台鐵 左営站に向かう。蒸し暑くてのどが渇き、脱水症状寸前かなと感じたため、急いで站へ。ちょうどやってきた電車に乗り、高雄站へ
左営站


■ 台鐵 左営站 14:37 → 高雄站 14:46 (15TWD)

高雄站を出て、コンビニでポカリスエットとアイスクリームを買ってホテルに戻りクールダウンする。2時間ほど涼しい室内で休憩し、夕食へ。自助餐で定食(45TWD)を食べ、それから排骨飯の店へ行きまたしても定食(70TWD)を食べる。

自助餐

排骨飯

ちょっと食べすぎか…。

■ 金馬大飯店 512号室 1273TWD(4073円)