2015/09/24

9月24日 ドバイ

9月24日(木曜日)

■ パリ シャルル・ド・ゴール空港 (前日)21:50発 → ドバイ空港 06:45着 (エミレーツ航空 EK076)

パリからドバイまでは、今年(2015年)5月にエミレーツ航空に納品された最新鋭のエアバスA380(A6-EOI)に搭乗。さすが、最新鋭機だけあり、機内エンターティメント・システムも最近のタブレットのように「映画の選択がパッケージ絵柄のアイコン選択」で行えたり、座席の足元も広々として乗り心地も良かった。ただ、最新鋭機といってもドバイ空港ではスポットエリアに駐機して、乗客はバスで20分位掛かってターミナルに運ばれるのはいつもの通り。土場空港は完全に容量オーバーしているのだろう。

このパリからの便の乗客の3分の1くらいは中国人観光客で、搭乗前の待合室の段階から大声でうるさく話し、搭乗開始前からゲート前に殺到し迷惑この上ない雰囲気だった。彼らの座席は機内の後ろのほうだったので、機内での様子はどんなのかわからないが、ドバイ人のCAさんが私に「日本のことは大好きですよ」と言ってくれたのは、おそらく機内後部に居る中国人の態度が最悪だったんじゃないかと推測される。


ドバイ空港に到着したパリ発のA380-800型機

ドバイのターミナル3では、ほとんどの乗客は乗り継ぎ通路に向かい、ドバイ入国はほんの少し。もちろん、入国審査場も空いてて全く行列に並ぶこと無くスムースにドバイ・メトロの駅まで辿りつけた。2週間前には、1等車(ゴールド・クラス)のチケットを購入したが、今回は2等車(レギュラー・クラス)の1日乗車券を購入(14ディルハム)。

今日の予定としては、12時にブルジュ・ハリファの入場券を予約しているだけだ。午前中に、ドバイ・モールより南側の地区を見て回り、午後からは旧市街やスークなどを見て回ろうと思う。

■ 空港第三ターミナル 07:32発 → ファイナンシャル・センター 07:56着 (メトロ Red Line,1日乗車券 14AED)

トバイ・モールの1駅手前、高層ビルが高速道路を挟むようにして立ち並ぶ駅で下車。駅の目の前に高層ビルが乱立している感じだが、周辺の道路は歩行者が歩くことは想定していないのか、埃っぽく殺風景だ。駅の西側、高速道路を横切った向こう側の駅出口前でタクシーに乗る。ジュメイラ・モスクまで13ディルハム。基本運賃が5ディルハムで、1kmで2ディルハムずつくらい増えている感じだ。高層ビルが乱立する高速道路沿いから離れると、住宅地のような感じのところを走るが、これがまた生活感が無い妙な所だ。とりあえず、歩行者が誰も歩いていない…

■ ファイナンシャル・センター前 08:05頃発 → ジュメイラ・モスク 08:14着 (タクシー,運賃13ディルハム)

ジュメイラ・モスク前でタクシーを降り、モスクを見物しようと思ったが、観光客の入場時間は10時とのこと。扉は開いていたので、入口のところからちらっと中を除くと、特に装飾などはされていない単なる四角い部屋のような礼拝場だった。地球の歩き方でも、ネット上のBlogなどでもここが観光地だと書いてあるが、どう観光地なのか…。 Wikipediaによれば、1976年に建てられ、ドバイで最も写真の被写体になっているモスクだとも書いてある。


ジュメイラ・モスク

さて、次は南の海岸線沿いにあるブルジュ・アル・アラブという変わった形のビルが観光地だというので、そちらの方向へ。その前に、ビーチ(砂浜)も観光地だというので、どんなものなのか見に行ってみる。ジュメイラ・モスクの辺りから、南へ1.5kmほどの範囲が「パブリック・ビーチ」だそうだ。モスクの前のジュメイラ通りにも「Open Beach」という道路標識が出ている。その標識の方に行ってみるが、海岸線の手前に延々と鉄板が立てられていて海など全く見えない。工事中なのか、単なるプライベートビーチとして囲い込んでいるのは不明だが…。

■ ジュメイラ・モスク 08:40頃発 → Majlis Al Ghoreifa 08:58着 (バス 8系統,1日乗車券 14ディルハム)

ジュメイラ・モスクの道路を挟んだ向かい側は、近隣のリゾート施設に来た金持ち観光客向けのショッピング施設。朝早いからなのか、今日が犠牲祭だからなのか、まだ閉店していてスターバックスだけが営業中。こんな所で営業しても、客が来るのかな…

その横の冷房が入ったシェルター状のバス停でバスを待ち、やってきた8系統のバスに乗車。ジュメイラ通りに沿ってバスはひたすら南へ。道路沿いは工事中の場所が多く、全く人を見かけない。バス停の近くにパリで見かけるような自動の自転車貸出スタンドがあるが、こんな炎天下の影のない所で自転車など乗ったら干上がってしまいそうだ。


Majlis Al Ghoreifa付近、海岸線沿いの街並み

およそ6kmほど南西へ行ったバス停(GoogleMapではMajlis Al Ghoreifaバス停と書いてある)で下車。ここも高級住宅なのかリゾート施設なのかがジュメイラ通りと海岸線の間に並んでいる。もちろん、海岸線には一般人が近寄ることが出来ないよう、住宅などの壁でしっかりとガードされていたりする。巨大な老人ホームのような施設もあり、金持ちが余生を送る場所として造られている場所なのかなぁと想像したりする。とは言っても、建物の外に一歩出れば、歩くことすら憚られる強烈な太陽光線と、まるで工事現場のような殺風景な砂っぽい環境の所に住みたいですかね…。

■ Majlis Al Ghoreifa 09:10頃発 → Wild Wadi 09:24着 (バス81系統,1日乗車券 14ディルハム)

こんどは81系統のバスに乗りブルジュ・アル・アラブ付近のバス停で下車。先ほどの場所から7kmほど南西に来た。ここは、8系統と81系統が交互に来ているようだが、バス停の路線図には81系統は書かれていない。バス停から少し北東に戻るとジュメイラ・ビーチ・ホテルという遊園地付きのホテルがある。バスから降りた2名ほどが、このホテルの従業員通用門から中に入っていった。道路から見上げる遊園地附属のプールの滑り台には、水が流れているのが分かる。こんな砂漠の真ん中に、大量の水を使ってプールですか…

このホテルから、バス停を挟んで反対側に例の変わった形のビル ブルジュ・アル・アラブがある。もちろん、一般の観光客はビルのだいぶ手前の検問所でシャットアウトされていて、検問所の所でインドから来た観光客が記念撮影をしていた。ジュメイラ・モスク付近から続く海岸沿いの地区は、一般の観光客が来ても、リゾート施設の壁を見るだけで施設の中には入れないため、猛烈な太陽光の中を修行しているだけのような所だ。


Wild Wadiバス停。左側に見える半月型断面のシェルターがバス待合室

■ Wild Wadi 09:35頃発 → モール・オブ・エミレーツ駅前 09:43着 (バス81系統,1日乗車券 14ディルハム)

およそ2km離れたモール・オブ・エミレーツ駅前へ。高速道路などの立体交差があり、バスは実際の直線距離の倍以上走って、駅からだいぶ離れたバス停に到着。駅とショッピングモールを繋ぐ歩道橋に上がって、ショッピングモールに入ってみる。日本にあるイオンモールを巨大化したような感じのところですね。ドバイで2番めに大きなショッピングモールだそうで、駅から一番遠い区画には屋内スキー場がある。砂漠の国で人口スキー場を維持できるのは、タダ同然の電力(産油国)のためなんだろうね。


モール・オブ・エミレーツの屋内スキー場(手前が「そり」、奥がリフト付きスキーの施設)

■ モール・オブ・エミレーツ 10:05発 → ブルジュ・ハリファ 10:10頃着 (メトロ Red Line,1日乗車券 14ディルハム)

メトロに乗り、ドバイ・モールに向かう。ばすなら30分以上掛かる距離が、途中駅が少ないメトロなら10分も掛からない。ブルジュ・ハリファ駅からドバイ・モールまでの間は、延々と冷房が効いている歩道橋で結ばれている。途中に隣接する高層ビルには、歩道橋からの通路は接続されておらず、これらのビルの利用客は自動車を使ってくることしか想定されていないのだろう。歩道橋の非常口から一旦地面に出ればビルに入れると思われるが、ビルの入口は非常口から遠かったりする。

駅から延々と1kmの歩道橋を通り、ドバイ・モールに入場。この時間帯はまだお客さんが少ないが、午後からは大量の人で歩道橋はいっぱいだった。


世界最大の広さのドバイ・モール

世界最大の広さのショッピングモールは、どこに何があるのか探すのも苦労しそうだ。まず、ブルジュ・ハリファの入場口を探す。メトロからの歩道橋が接続されているのは最上階の「2階」で、ようやく見つけたブルジュ・ハリファの入口はそこから3階下の「GL階」。位置的には、モールの同じ側にあるのでそれほど歩く距離は多くはない。入場時間まで1時間ほどあるので、2階にあるフードコートで昼食を食べることとする。

ショッピングモールの開店時間からそれほど経っていないため、営業している店は半分程度。インド料理のファストフードのチキン・ティッカを食べる(36ディラハム)。


インド パンジャブ料理のチキン・ティッカ

11時45分にブルジュ・ハリファの入場口へ。受付カウンターで、インターネットのバウチャー(130ディラハム)を入場券に引き換えてもらう。当日券はもっと高額らしい。入口を入り、建設経過の写真などを展示した通路を歩いてブルジュ・ハリファのビルの中に入る。エレベーターに乗り124階へ。現在の「世界で最も高い」超高層ビルで、高さ828m。ただし、普通の料金で登れる展望台への高さは452m(124階)で、中国の上海にある上海環球金融中心ビル(474m)よりも少しだけ低い。


北方向、ファイナンシャル・センター駅方向のビル群


南方向の景色

展望台から見れる景色は、砂漠の中にポツポツとビル群が立ち並ぶ不思議な風景で、この国が人工的に造られた計画都市だと分かる。2009年に上海のビルに登った時には、無秩序に広がるビル群が周囲を取り囲んでいたのとは対照的だ。ブルジュ・ハリファがすごいなと思ったのは、写真撮影用に「ガラスに切れ目を作ってカメラのレンズを外に突き出せる空間」を作っていることだ。展望台を設計した人は、ガラスに反射する光で写真がうまく取れない経験をした人なのだろう。

30分ほど展望台で過ごし、再びエレベーターに乗って地上へ。ビルのどこにも「エレベーターも世界一」と書いていないのは、ここのエレベーターがそれほど速くはないからだ。ブルジュ・ハリファのエレベーターの速度は「600m/min」のオーチス製。このビルが建設された当時の最高速度のエレベーターは日本製(東芝や三菱など)で1000m/minのものが実用化されていた。まあ、あんまり速くてもエレベーターに乗った感じがしないからダメなんだろうね。

再び、隣接するドバイ・モールに行き、地下(G階)の巨大水槽(水族館の一部)をちらっと眺めてから、メトロの駅へ。モールの通路に面した水槽のアクリルパネルは、世界最大級の面積だそうだ。(シンガポールにある水族館のほうが若干大きいので世界一ではない)


外から眺めたブルジュ・ハリファ

メトロの駅への1kmの歩道橋は、朝と違って大量の人であふれていた。

そういえば、メトロの駅のガラス窓に『イード・アル・アドハー期間中の地下鉄の運行計画』という貼り紙があり、『昨日(23日)と今日(24日)は通常通り05:50〜26:00、明日(25日)は10:00〜26:00が運転時間』だと書いてあった。祭日だが、だいたい通常通りの運転のようだ。犠牲祭は9月24日から4日間なので、今日が祭日の初日ということで客が多いのかもしれない。なんと言っても、人工的に造られた街で休日に出かけられる行楽地は、人工的に造られたショッピングモール位外にないのだから…。

■ ドバイ・モール → ブルジュマン 乗換 13:49 → アル・ファヒード 13:55頃着 (メトロ Red Line→Green Line,1日乗車券 14ディルハム)

駅のコンコースにカルフールのコンビニがあったので、ミネラル水(1ディラハム)と電子レンジで温めるサモサ(1.5ディラハム)を買ってイートインコーナーで食べる。まさか、アラブの国で日本のコンビニと同じ様式の店があるとは思わなかった。

駅を出て旧市街を目指す。ドバイ・モールやモール・オブ・エミレーツ、あるいはジュメイラの海岸線沿いとは違って、こちらは一般の人達が屋外を歩いているし、建物の1階には道路に面して様々な店がある。犠牲祭の祭日なので、駅の近くにある店を除いて、ほとんどが閉店している。普段なら大量の買い物客で溢れかえっているのだろう。駅から800mほど、なるべく建物の日陰を歩いてドバイ博物館とグランド・モスクがある場所に到着。確かに、トルコなどで見かけるミナレットとドームを持った対照形の美しいモスクを真似たジュメイラ・モスクに比べて、いかにも普通のモスクというのがこのグランド・モスクだ。こちらも、中は見学できないようで、それでも礼拝者のフリして中に入ってみるとゴザと絨毯を敷き詰めた礼拝室と、その手前に浄めの洗い場ウドゥの個室が並んでいるだけだ。


アル・ファヒード砦(現在は博物館)と、グランド・モスクのミナレット

ドバイ博物館のほうへ。18世紀に造られたアル・ファヒード砦を博物館として整備したものだ。入場料は3ディラハム。昔の手こぎボートが何隻か屋外に展示されてるのと、剣や銃などの昔の武器が展示されている。Wikipediaによれば、この地は19世紀以前は「小さの漁村」だったとのことで、歴史は殆ど無いために博物館に展示するものも無いのだろう。イラクやシリアのように、そこら中にアッシリアやペルシャ、あるいは古代ローマの遺跡が転がっているような国なら展示するものもたくさんあるのだろうが…。そういう国は古代より戦乱にまみれて、安全すら守れないので経済や観光どころじゃない。ドバイのような「何もないところ」が中継経済の安定した拠点となってなっているのは、ある意味、消去法的に必然性があったのかなとも思う。観光客としては、何もないところを見ても全然面白くないんだけれども…


オールド・スーク

モスクの裏手には、インドのヒンズー教の寺院があり、こちらのほうがたくさんの参拝者を集めている。ヒンズー教寺院から川の下流方向に向かって商店街(オールド・スーク)が続いていて、衣料品や土産物を売るインド人の店が集中している。こちらは、半分くらいの店が開いていて沢山の人が歩いている。開いている店はイスラム教徒じゃないからなのか、祭日は書き入れ時と思って開店しているのかどちらなのだろうか。


旧市街 バスタキヤ地区

旧市街のバスタキヤに向かう。グランド・モスクとの間には政府の宮殿のような建物があり、川沿いの岸壁を迂回して歩く。川には、対岸との間を結ぶ渡し船が頻繁に往来している。川を横切る地下鉄(メトロ)があるのに、渡し船に沢山の人が乗っているのは、値段が安いからなのだろう。旧市街は、ほとんど全ての観光客向けの店が閉店していて閑散としている。無理やり作ったテーマパークのような場所だから、地元の人は来ないのだろう。旧市街といっても、19世紀末に造られた村を21世紀になって観光地化して再整備した所だから、生活感が全然ないのは仕方がないだろう。

■ アル・ファヒード → アル・ラス (メトロ Green Line,1日乗車券 14ディルハム)

再びメトロの駅に戻り、川をわたって2駅目のアル・ラス駅で下車。駅を出ると強烈な西日が照りつけている。GoogleMapのナビで、300mほど南にあるスパイス・スークまで歩く。この付近の道路沿いは、5階建てくらいの建物の1階が全て商店になっていて、今日が祭日でなければ沢山の人でごった返していたことだろう。スパイス・スークは東側の一部分の店だけが営業していて、やはりほとんどの店は祭日で閉店している。猫だけが、のんびりと商店街のアーケードの下でくつろいでいる。スパイス・スークの更に西側は、ゴールド・スークといって宝飾品を売る店がある。こちらはたくさんの店が営業中で、観光客が貴金属のアクセサリーを展示したショーウインドウの前で記念撮影している。


スパイス・スーク


販売されているスパイス(手前はシナモン)

アラブの人たちは、貴金属を買うのがいまでも好きなのだろうか。自国の通貨が信用できないからと言って、現物の貴金属を売買するときの手数料はバカにならず、それなら貴金属に投資するETFやファンドを買ったほうがマシだと思う。


ゴールド・スークで記念撮影する旅行客

スークの南側は川に沿った岸壁になっていて、たくさんの木造貨物船(ダウ船)が荷物を積み降ろししている。まさか、この小さな木造船でインドや中国などの「スークで売る商品」の仕入れ取引を行うのではないだろうから、国内の近隣の港などへ運んでいるのだと思う。

岸壁の一部に、渡し船の乗降場があり、そこから対岸のオールド・スークに渡る船に乗る。渡し船の乗降場で見かけるのは男性ばかり。女性は乗れないのか、あるいはめったに運行されない専用の船があるのだろうか…。


渡し船の中からBaniyasの乗降場を振り返り撮影

■ Baniyas 16:28 → オールド・スーク 16:34(ウォーター・バス B2系統,運賃1ディルハム)

テーマパークと考えれば、ドバイは安く楽しめる場所だと思う。ただ、実際に生活するとなると、日本レベルのサービスを求めれば物価は高く、出稼ぎのインドやパキスタンの人たちと同じレベルのもので良ければ格安という、微妙なものがあると思う。

夜景を撮影するため、再び超高層ビルのブルジュ・ハリファのあるドバイ・モールに戻る。

■ アル・ファヒード 16:50頃発 → ブルジュマン 乗換 → ドバイ・モール (メトロ Green Line→Red Line,1日乗車券 14ディルハム)

ドバイ・モールの駅を降りてショッピングモールへ続く歩道橋に入ると、猛烈な数の人が歩いている。朝はあれだけ空いていたのに、夕方になると大混雑している。日没は「ヨーロッパと同じく19時頃」と勘違いして、モールの中のフードコートでイラン料理をのんびりと食べる。チェロウ・ケバブという、挽き肉のシシュ・ケバブをピラフの上に載せたものを食べる。たぶん、間違えて2人前用の「大」を注文してしまい値段は58ディルハム。シシュ・ケバブが2本ついてきたので2人前で間違いない…。


イラン料理 チェロウ・ケバブ

で、ドバイは夏時間じゃないので日没の時間が「18時過ぎ」なのだ。19時少し前にモールの外に出ると、既に真っ暗。夜景の撮影タイミングを完全に逃してしまった…。 ブルジュ・ハリファの北側の道路沿い、公園のような所に行く。今日の昼過ぎにここに来た時には、近隣のビルで働くインド人が何十人か、木陰に座って休憩していたが、この時間帯はあまり人がいない。もちろん、外国人観光客も外に出ては観光しないのか、ほとんど見かけない。

もううこし距離の離れたところから写真撮影できれば、地上の景色も含めたビルの全貌を見ることが出来るのだが、周囲は中層階のビルに囲まれていて、あまりの蒸し暑さに撮影ポイントを探して歩きまわる気力も出てこない。せめて、夕焼けの紫色の空だったらと残念だ。


ドバイ・モールの出口付近から見たブルジュ・ハリファ


ブルジュ・ハリファ

メトロの駅に戻る。地上をインド人やパキスタン人の学生か労働者が大量に駅の方に向かっている。彼らに紛れて駅の方に向かうと、警官や交通局の係員が阻止線を敷いており、混雑のため駅に入れないようにしている。かといって、入口の前で行列を作って待たせると、押し合いの混乱になり死傷者が出るのが中近東や南アジアでは常のため、長い迂回路をバリケードで仮に作って、その迷路を早歩きで歩かせて暴徒化を避けるという混乱対策を取っている。さすが、棒と対策に慣れている国だけはある。家族連れなどは途中の抜け道から冷房の聞いた歩道橋に上がれる階段を開放していたが、南アジアの労務者と同じカテゴリーの私は、警官隊や駅係員に追い立てられる羊の群れに紛れて歩き続けるしかなかった。

20分位、クソ蒸し暑い中、バリケードの迷路を歩かされ、やっと駅に繋がる歩道橋に上がれたと思ったら、こんどは歩道橋の上でまた迷路が作られていて、一般客も含めて全ての人が駅改札を通り越し高速道路の向こう側、400mくらいの特設迂回路を歩かされる。ゲルマン人のおっさんが、勝手にバリケードを潜りぬけ改札に抜け駆けした。警官が注意したが聞き入れる様子もなく改札に向かっていったが、誰一人として周囲のインド人やパキスタン人、あるいはアラブ人も居たかもしれないがそのゲルマン人に続く人は居なかった。ふつうなら、一人が抜け駆けすると、あとからぞろぞろとルールを破る奴が出るのだが、こちらの国では銃やスタンガンでの実際の阻止行動が行われるかもしれないから、ルールを守らざるを得ないのだろう。

こんな風景を見ていても、湾岸諸国での人種の階層が 『ゲルマン人 > アラブ人 >>>> アジア人等』となっていて、差別ではなく確実に区別されていることが分かる。イスラエルに居るパレスチナ人が、ちょっとデモをするだけでイスラエルの治安部隊からゴム弾で攻撃を受けるように… フルスペックの人権は権力者側にしか無いということだ。

大量の人々を迂回路を作ってうまく時間調整させ、駅に入る人間をコントロールしているから、10分おきに来る電車は混雑することもなく普通に運行している。日本ではありえない、巧妙な雑踏対策だ。『止まって並ばせない。常に歩かせ疲れさせる。武器で脅し権力者が誰かわからせる』というポイントを押さえた理想の国なのかもしれない。

■ ドバイ・モール → ブルジュマン 乗換 → アル・ファヒード 20:05頃着 (メトロ Red Line→Green Line,1日乗車券 14ディルハム)

再び、夜のオールド・スークに向かう。中東の旧市街の夜景は、あまり期待できないのは北アフリカ諸国で体験済みだ。予想通りモスクはライトアップされているが、グランド・モスクがライトアップされても見所とは言えないだろう。川沿いは街灯も少なく、暗い中を対岸との渡し船が頻繁に行き来している。この街の夜景の撮影ポイントは、金持ちが入るホテルやリゾート施設を除いて公道から見られる、ブルジュ・ハリファくらいかもしれない。

■ アル・ファヒード 20:40頃発 → ブルジュマン 乗換 → 空港第三ターミナル 21:00着 (メトロ Green Line→Red Line,1日乗車券 14ディルハム)

空港の出発ロビーにある発着案内では、22時から02時まではそれほど出発便はなく、02時30分から04時までの間に大量の飛行機が出発する。3時間前にチェックインが開始されるとしても、まだ乗客は空港に来る前だ。チェックイン・カウンターがある出発ロビーには誰一人客の姿は見かけず、不思議なくらい静まり返っている。

朝、ターミナルビルの到着ロビーにある荷物預かり書に預けた荷物を回収。12時間が20ディルハムなので、14時間ほど預けたので40ディルハムをクレジットカードで支払う。出国審査を済ませ、まだあまり客の来ていないゲート前付近のリクライニング・ソファーに陣取る。24時頃、昨日パリの空港で発券してもらったミール・クーポンを使い、バーガーキングで無料のワッパー・メニューを注文。普通のセットに加えて、アップルパイも付くという妙な豪華さ。欧州へ行く時に入ったマクドナルドの価格から推定すると、1000円分くらいの価値はあると思う。

■ ドバイ空港 (翌日)03:00 → 大阪 関西空港 (翌日)16:30 (エミレーツ航空 EK316)

パリから乗った便と違って、今度は日本人が大半で、そこに観光目的で日本に行くと思われるヨーロッパ人が少数という乗客構成。日本人は搭乗口前に殺到することもなく、大声で騒ぐこともなく、至って静かな人種だ。ヨーロッパ人も似たようなものなので、いかに中国人が異常かが1日に乗った2便の飛行機で感じた。

今度乗った飛行機はB777-300で、2005年にエミレーツ航空に納品された機体。機内エンターテイメントのコンピューターも古く、操作性や画面の美しさはA380の最新型の足元にも及ばない。もちろん、HDDの容量も不足しているのか、番組の数も翻訳の件数も少なく、同じ料金で乗るのなら最新の機種のほうが良いと思う。